JA:歩道/SidewalkMapping

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この記事は、2016年6月にアメリカで始まったGlobal OpenSidewalksというプロジェクトで提案されている歩道のタグ付けの枠組を元に、できるだけユニバーサルな歩行者向けのナビゲーションができるようにすることを目指して、経路をたどれるようにするための日本でのマッピング方法を整理しようとするものです。 日本では幸い基盤地図1/2500で比較的広域にわたって歩道をトレースすることができます。トレースで下書きをした後に現地調査して仕上げると良いでしょう。

マッピングの概略

歩道のマッピングは色んなパターンがあり、細かくやろうとすると大変かもしれません。まずは簡単なところから始めて、慣れてきたら詳細な情報を入れていくのがよいかもしれません。 ここでは十字路に歩道と横断歩道がある場所を例にして、イラストで説明します。詳細は下記説明を参照してください。

Step 1 まずはシンプルに

まずは車道と歩道を別に描いてみましょう。歩道には`footway=sidewalk`を、横断歩道には`footway=crossing`を付けます。とりあえずはこれで十分です。

OSM Sidewalk stage1.svg

Step 2 少し詳細に

歩行者用信号がある場合は、横断歩道と車道が交差する点に`footway=crossing`と`crossing=traffic_signals`をつけましょう。もしかしたら、ナビソフトが信号を考慮した道案内をしてくれるかもしれません。

OSM Sidewalk stage2.svg

Step 3 だんだん深く

歩道で目立つものと言えば点字ブロックでしょうか。点字ブロックは`tactile_paving=yes`です。

OSM Sidewalk stage3.svg

Step 4 あらゆる情報を

車道と歩道の段差に`kerb`をつけたり、歩道の幅を`width`でつけたり、気が済むまでマッピングしてください。

OSM Sidewalk stage4.svg

その他の事例

踏切 歩行者用信号だけがある横断歩道
OSM railway crossing.svg OSM Sidewalk only pedestrian crossing.svg
この場合の信号機は`highway=traffic_signals`です。


トレース方法

基盤地図1/2500

車道に沿った普通の歩道

明示的に判別できる歩道エリアの中心線付近を歩道としてトレースします。

基盤地図1/2500
highway=footway
footway=sidewalk

エリアとしての歩道

いわゆるペデストリアンデッキのような広い部分は既に

highway=pedestrian
area=yes

というようにエリアで描かれている場合があるかと思います。 それはそれで残しておいて、通行時の目安となる経路を

highway=footway
footway=sidewalk(道路の脇にある歩道の場合のみ。広場では省略)

でラインとして描きます。

歩道の進行方向

歩行者にとって、特に指定がない限り歩道の進行方向は決まっていません(=双方向です)が、手すり(handrail)や斜度(incline)などのタグは歩道に付随するものとして方向(右側/左側、上り/下り)が必要なので、歩道を描く際の進行方向は右側を歩く際の進行方向が前になるように描きます。

衛星/航空画像

ゼブラゾーンのある横断歩道

横断歩道は基盤地図ではわからないので鮮明に見える衛星/航空画像を選び、横断歩道のゼブラゾーンが見つかったら車道を横切る形でラインを引き、歩道どうしをつなぎます。

地理院オルソ画像
highway=footway
footway=crossing
crossing=zebra(省略可)

<例> http://www.openstreetmap.org/way/430193336

ゼブラゾーンの無い横断歩道

住宅街の道路(歩道なし)が幹線(歩道あり)にぶつかる部分など、幹線沿いの歩道がいったん無くなり、住宅街の道路を横断する形になる箇所がよくあります。このような箇所にはゼブラゾーンが無いところも多いのですが、歩行者の経路の一部なので、ゼブラゾーンの無い横断歩道として描きます。

基盤地図1/2500
地理院オルソ画像
highway=footway
footway=crossing
crossing=unmarked

<例> http://www.openstreetmap.org/way/430725238

現地調査

歩道の詳細

路面、幅、斜度などをマッピングします。

surface=*
width=*
incline=*

幅や傾きは詳細にやり始めるときりが無くなるので、初めは車椅子での通りぬけが難しそう等、注意が必要な箇所だけで十分です。メジャーや水準器なども持参しておくと幅や斜度など問題となりそうな箇所の数値を測定することができます。 <例> http://www.openstreetmap.org/way/430193334

点字ブロック

歩道のうち、点字ブロックが敷かれている部分を区切って

tactile_paving=yes

のタグを付けます。 直進用だけでなく、横断歩道の直前など、立ち止まるべき場所にあるものも丁寧にタグ付けします。視覚障害をお持ちの方は、特に車道と交わる縁石部分がまっ平らになっている場合は点字ブロックが無いと車道との境界(停止位置)が分かりません。

<例> http://www.openstreetmap.org/way/153205104

立ち止まるべき場所に点字ブロックが無い場合には

tactile_paving=no

とタグ付けすることも有用です。

<例> http://www.openstreetmap.org/way/430193331

縁石

障害のある方にとって歩道と車道が交わる部分で縁石がどのようになっているかは非常に重要なチェックポイントです。 車椅子利用者にとってはフラットなほど良く、おおよそ3cmくらいまでの高さであれば乗り越えられますが、一方で白杖利用者にとっては車道との境界(立ち止まる位置)を判断するのに段差があった方が分かり良い(フラットであってもその手前に点字ブロックがあればOK)という面があります。車道、縁石、歩道の高さ関係としては以下の様なものがあります。

  • 車道と歩道が同じ高さで、縁石のみ高くなっているもの
  • 車道だけが低くて、縁石と歩道が同じ高さになっているもの
  • 車道が低く、次に歩道が高く、さらに縁石がより高くなっているもの

細かく描けば、歩道と車道の間にある縁石は、ほぼ歩道とおなじだけありますから、特に歩道と縁石の高さが異なる場合には縁石を歩道とは別のラインとして延々と描くこともできますが、重要なのは歩道から車道に降りなければならない箇所での縁石の状態です。 従って、ここでは歩道と車道の接点に位置する縁石の状態をポイントとしてマッピングすることを主眼にします。歩道と車道の接点にある縁石の高さは、最近では比較的配慮されているところが多く、3cm以上の高さが残っているところは少ないです。このため、縁石の高さもcm単位でタグ付けできるのですが、それは危険な箇所だけ特に測れば通常はおおよその判断で十分です。外観的に見て、おおよそ以下のようにタグを区別します。

mapillary
barrier=kerb
kerb=lowered(値と意味:raised(持ち上がっている)/flush(まっ平ら)/lowered(ゆるやかな傾斜)/no(縁石が無い))

<例> http://www.openstreetmap.org/node/4294717996

横断歩道

事前トレースしたものについては、路面(たいていはアスファルト)、ゼブラゾーンの有無などをウェイで描かれた横断歩道の付加タグとして追加します。

highway=footway
footway=crossing
crossing=zebra(値と意味:uncontrolled(歩行者用信号なし)/unmarked(ゼブラゾーンなし)/zebra(ゼブラゾーンあり、省略可))

横断歩道に点字ブロックが敷かれている場合は下記を付加します。

tactile_paving=yes

<例> http://www.openstreetmap.org/way/430199720

歩行者用信号

物理的には横断歩道の両端に2箇所設置されていることが多いと思いますが、通常同じものが設置されていることが多いので、論理的にひとつとみなして横断歩道と車道との交点ノードに以下のようにタグ付けします。

highway=crossing
crossing=traffic_signals

信号の付帯設備により押しボタン式の信号、音声案内、振動による案内など、次のような付加タグも追加することができます。

button_operated=yes
traffic_signals:sound=yes
traffic_signals:vibration=yes

<例> http://www.openstreetmap.org/node/600623674

踏切

従来、歩行者から見た踏切は歩行者専用の小さな踏切(railway=crossing)を描く程度でしたが、車用の踏切(railway=level_crossing)の脇にも歩道があることが多いので、その表現方法を以下に整理します。

歩行者専用の踏切

まず横断歩道としてラインを引きます。歩行者専用踏切は割と簡易的に施工されているところが多いので、ハンディのある方向けにはその路面(surface)もタグ付けしておくと経路判定の参考になります。

highway=footway
footway=crossing
surface=wood(下記写真の路面は異なります)
mapillary

<例> http://www.openstreetmap.org/way/432710812

次に横断歩道と線路の交点ノードに歩行者用踏切のタグを付けます。踏切の設備に応じて遮断機や警報機のタグなども付加します。遮断機の種類はより詳細なタグも付けることができます。

railway=crossing
crossing=traffic_signals
crossing:barrier=yes
crossing:bell=yes

<例> http://www.openstreetmap.org/node/2650131017

車両用の踏切に歩道が併設されている場合

歩行者専用の踏切と同様に、まず横断歩道をラインで引きます。遮断機や警報機は、通常車用と歩行者用で分かれていないので車両用の踏切ノード(railway=level_crossing)にひとつあれば地理表現としては十分なのですが、歩行者向けの経路案内を考える場合に、歩行者の経路だけで判断できる方がコストが少ないので横断歩道と線路の交点ノードにも車両用と同じ踏切(railway=level_crossing)、遮断機、警報機のタグを付加しても良いものとします。

mapillary

<例> http://www.openstreetmap.org/node/245519338

なんちゃって歩道

基盤地図では縁石で明示的に区切られていない歩道は描かれていないようですが、実際には物理的な縁石ではなくペンキで白線が引かれていたり、歩道幅が緑に塗られていたりして歩道を表している場合があります。こういったいわゆる「なんちゃって歩道」(道路交通法では路側帯と呼びます)の扱いははっきりとは決まっていませんが、ひとまずは車道に付加タグとして

sidewalk=left/right/both

をつけるやり方(従来の簡易的な歩道表現)で良いでしょう。 割と幅が広くて分けて描きたい場合は

mapillary
highway=footway
footway=sidewalk
kerb=no

と描いても良いこととします。 車椅子や白杖で通る場合は縁石が無いと危険を感じる可能性がありますが、マッピングとしてはできるだけ客観的な事実を描き、通れる/通れないといった主観的な判断は当人(というかアプリケーション)に委ねるという考え方が良いんじゃないかと思います。

路面のスムーズさ

smoothnessタグについては、主観的な判断が入るのでその使用には賛否あるようですが、歩道がアスファルト舗装されていてもその下の土砂が流出したり、街路樹の根っこが張り出してきてデコボコしていることはよくあります。また、線路の横断は結構危険が多く、路面も金属、アスファルト、ゴム、木材などが混在していたり、歩道と線路の交差角度が鋭角な場合には雨天時に自転車や車椅子の脱輪の可能性があったりするので、このあたりは精緻に客観的にタグ付けするというよりも、 ある程度ざっくりsmoothnessタグで、

smoothness=good(まあまあ大丈夫)
smoothness=intermediate(微妙)
smoothness=bad(避けたほうが良い)

の3段階くらいで描くと良いのかなと考えています。

建物の入り口

障害のある方にとっては道路脇の歩道から建物の入り口までの経路も、特に大きな建物の場合にはみつけにくいことが多いので重要です。建物近くの歩道から入り口までの経路をウェイ(通常はhighway=footway)で引いて、建物の外周の該当箇所に入り口のタグを以下のようにノードで記述します。

entrance=yes/main/...

<例> http://www.openstreetmap.org/node/4044545554

エレベータ

屋外の目的地であっても、障害のある方にとっては経路上エレベータを利用しないと遠回り、あるいはたどり着けないことが都市部ではよくあります。通り抜けのために一般に開放されているエレベータも多くありますので、それらをマッピングすることで適切なルート案内が可能となります。下記タグのノードを置いて、必要に応じて停止階をlevelタグで表現します。

highway=elevator

<例> http://www.openstreetmap.org/node/4958223860

写真

現地調査の際には写真を撮っておき、タグ付けした箇所に紐づけて

image=*

で写真のURLを描いておくと良いでしょう。 補足説明用にアプリケーションでの利用などが考えられます。mapillaryアプリで撮ると位置情報が自動的に付加され、エディタからも参照できるので便利です。